オーストリア視察-その4

その4が書き終わらない(笑)

[9月17日]
今朝はミニバスによる移動からはじまります。ホテル正面に待機しているミニバス に乗ると、一時間ほど揺られます。そうして到着したのがオーストリア森林管理局株式会社です。
同社は今日では様々な分野に進出し、多角経営を行っていますがもともとは国有地の管理会社でした。

レクに立ってくださったのが国際プロジェクト担当のローランド・カウツ氏。彼の説明によると、オーストリアでは約300年前からsustainabilityを重要視しているとのこと。わかります、産業革命でハゲ山作った反省ですね。彼らの主たる仕事は国土保全。委託事業のようなものでしょうか。国土の10%を任されていますが、うち74%は森林や国定公園、保護林、狩猟区。さらに74の湖、2,000kmにおよぶ大小の河川が対象です。

さて、彼らの活動の本的な枠組みはオーストリア森林管理法によって定められています。そこで掲げられた4つの目的とは以下の通りです。

  • 森林資源の有効活用
  • 国土保全機能の維持
  • 生態系の保護
  • レクリエーション

日本人でも上から3つはよくわかる内容ですが4つ目は見慣れない項目です。レクリエーションとはグリーン・ツーリズムの同類と解してください。大自然と触れ合う中で心を癒やしましょうと、そういうことです。これはまあ副産物のようなもので本質は国民の森の利用権の設定です。森林の維持管理には税金が投入されますが、ということであれば一定のルールのもとで利用権を設定しようと、そして積極的に利用してもらう中で森林機能と公金利用にさらなる理解をいただこうとするものです。日本では山菜採取の問題で揉めたりしますが、ドイツなどでは利用権の設定に併せて山菜採取に関するルールが用意されています。

さてローランド氏が言うには、15年前のオーストリアも日本と同様に林業の低迷に苦しんでいたそうです。そこでオーストリア政府は、国有林管理を業務とする森林管理局を中心とした抜本的な林業改革を行いました。同管理局をオーストリア森林管理局株式会社として再出発。もちろん一筋縄ではいきませんでしたが失敗を繰り返しながらも徐々に変わったそうです。かつては年間100-200万ユーロ/年の赤字を出していたそうですが、いまでは15年で360,000,000ユーロの黒字を出すようになりました。事ここに至ることができたのは、公営であった当時は仔細に及ぶ規則の中でいかに淡々と作業をこなすことが求められていたのに対して、民営化によって利益をあげて会社を維持存続する必要に迫られたためとのことでした。また、かつては市場や最終消費者のニーズを考慮することはなかったが、今日では森林専門官の育成やIT技術等の導入、ロジスティックの確立を進めることで材の品質と需給の安定化をはかり、市場にしっかりと応えられる生産・運営体制を用意できたことが経営の安定化に寄与しているとのことでした。日本流に言うと構造改革路線が上手くいった例ですかね、別に盲目的礼賛主義ではないですよ。ポイントは民営化というよりもその手前の窮地に立たされたことにあるのではないかと思います、ノルウェーの漁業管理しかり。

オーストリアの林道は34-36m/haの割合で整備されているそうです。なお、ヨーロッパの他の国では4-6m/haとのことでした。この差異はアルプス山脈の有無と関係しているのでしょう。同社はSimmeringのバイオマスプラントの出資者および共同経営者であるとともに主たる燃料材の供給者でもあります。同社所有の資源として活用可能な森林面積は約35,000haであり、森林経営計画とは別に1年先までの供給計画を立てて、19ユーロ/MWで同プラントに供給している とのことでした。ちなみに、売電価格の優遇が切れる2019年以降はどうするのか?という質問に対しては、熱供給事業だけ運営していくとの回答でした。寒い国ですし化石燃料も高騰してますからそれで採算とれるのでしょう。

私としてはもっと実際的な林業施策について聞きたかったのですが、どちらかというと政府のエネルギー政策と木質バイオマス関連に話題のウェイトがあり消化不良気味です。

831同社に別れを告げるとミニバスはギュッシングを目指して移動をはじめます。
時間が押し気味なので途中のドライブスルーで食事を済ませました。かつて現地の農村で一般的に食べられていたというメニューを注文したのですが、卵をくぐらせたパンを油であげて塩コショウで味付けしただけのシンプルな品。食べれば食べるほど胃がもたれました。

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再度高速道路に戻り1時間ほど走ってついに到着しました。ウィーンの南方、ブルゲンラント州ギュッシング郡シュトレム村の欧州再生可能エネルギーセンターです。我々に説明と案内をしてくださったのはシュトレム村の村長ドイチェさん。恐縮です。世界に注目されるギュッシングだけあって世界中から招聘されるそうです。本年の2月には京都のシンポジウムにも呼ばれたそうです。ところでみなさんはギュッシング市じゃなくてなぜシュトレム村なのかとういことが疑問に思われるのではないかと思います。たしかに、すべての発端はギュッシング市長の20年前の取組からスタートしました。その後政府やEUから評価を受ける中で協力の輪を広げ、周辺の12自治体で取り組むようになりました。そしてRESの最先端の研究を行うことを目的にEUと企業の支援で建設されたのがシュトレム村の欧州再生可能エネルギーセンターなのだーということです。んー、実は私も現場に来るまではセンターの所在地はギュッシング市だとばかり思っていました。ちなみにシュトレム村の西隣がRESの開祖、ギュッシング市です。ブルゲンラント州人285,000人、ギュッシング郡26,500人、ギュッシング市3,772人(面積は日高村程度だったような・・・)、シュトレム村994人。

ギュッシングの再生可能エネルギーに関する取組は、H24年2月の予算委員会の質問でも取り上げていますのでそちらもご参照ください。[高知県議会議事録]

ドイチェさんによると、1980年代までのギュッシングの置かれた状況としては

  • ヨーロッパでも最も貧しい地域
  • ソ連圏ハンガリーに国境が隣接
  • 主たる工業・商業施設がない
  • 高い失業率
  • 人口の7割が出稼ぎ状態
  • 激しい人口流出
  • 規模の小さな農業
  • インフラの未整備

といった惨憺たるものだった。
何とかしなければならないと危機感を募らせた前ギュッシング市長のペーター・バーダッシュ氏は、有志を集めてギュッシングの分析を行った。その結果、地域から流れ出ているお金の流れに着目し、熱・電気・燃料エネルギー費が最も額の大きいことを突き止めた。彼らは再生可能エネルギーによるエネルギーの自給を行うことで富の流出に歯止めをかけようと考えた。以下はその取組内容である。

  • 公共建築物をはじめとする節電と断熱化(省エネ)
  • 再生可能エネルギー供給網の整備

無題

始めた当初はほとんどすべての人間が冷ややかな目で見ており、新聞までもがギュッシングの脱化石化取組を揶揄するほどであった。もちろん暖房器具メーカーなどからも反対が相次いだとのこと。しかし彼らは信念を曲げることなく、前述のとおりまずは省エネを進めた。次に日射を利用した太陽熱利用および太陽光発電、農家の副産物を利用したバイオガス発電が採用された(灯油の3分の1のコスト)。また間伐材を利用した木質バイオマスによる地域熱暖房網は、全長27kmに達し市内を網羅している。始めた当初は17世帯に対して熱供給を行うのみであったが、今日では家庭の約半数、事業所に至ってはすべてが熱供給網に接続され、熱自給率98%を達成している。利用者の負担方法は地域によってまちまちであるが、シュトレム村では初期接続料と熱利用量に応じた従量課金制となっている。2001年からは木質チップのガス化して発電と発熱を行うコジェネレーション設備(€1,600万)が運転を開始。かつては菜種や廃油からのバイオディーゼル燃料も生産していたが、現在では木質メタン燃料の開発に力を注いでいる。同市の取組開始から10年、その成果は以下の通りである。

  • 50以上の新規事業所
  • 1,100人以上の新規雇用
  • 900万ユーロ/年の地域の黒字
  • 1,360万ユーロ/年相当のエネルギー生成
  • 44,000トン/年の木材消費(成長量は88,000トン/年であるが、不在地主の問題なども…)
  • グリーンツーリズムによる訪問者数3万人/年
  • ギュッシング郡の年間宿泊数⇒取組前の1万8,000泊から35万泊に増

成果が見られるについれて同市の取組を見直す動きがすすみ、いまではギュッシング郡内の13の自治体が力を合わせて再生可能エネルギー導入の取組を進めている。一連の動きに大きな役割を果たしたのが1996年に設立された欧州再生可能エネルギーセンター。技術者の育成はもちろん、住民にもその重要性を理解してもらうための啓蒙活動が不可欠とのこと。

ひと通りの説明と質疑を終えると、一行は現場視察に向かいました。まずはバイオガス発電所。

1,600万ユーロかけて作られた本プラントはパイロット的な部分も兼ねているとのこと。なるほどプラントからは隣の研究施設向けて生成したガスを送り出すパイプが伸びています。チップは野ざらしで、ガス化過程においてあまり含水率は問題にならないとのことでした。木材を2.5t/hで消費し、2MWhの電気と4.5MWhの熱を地域に供給。ここで精製されてるSNG(車に供給されているガス)は、ディーゼルの1/2のコストとのことです。

次にバイオガス発電施設を見学しました。

同施設の建設費は230万ユーロ。農家の人々が有償で持ち寄る芝生やトウモロコシが燃料です。その総量は1万2,000トン/年であり、約250haの農地から賄われます。発酵期間は49度の発酵容器の中で約3ヶ月、生成量は250㎥/h、そこから発電機に送られ電気を500kWh、熱を535kWh生成しています。売電価格は17.5セント/kWh。

そのすぐ隣の敷地にはバイオマスボイラーが設置されていました。

ボイラーの出力は1MW、導入費は5kmの熱供給網と設備を含めて170万ユーロとのこと。1,200世帯の電気と160世帯の熱供給をまかなうことができます。発電機はたぶんバイオガスの発電機だと思います。最後の熱量メーターは説明によると実験的機器らしくて、ここでの運用がうまくいくようなら今後普及させていくとのことでした。どのあたりが新しいかと言うと、通常熱供給用に生成された熱は高温高圧の状態で供給パイプを伝い各家庭の地下に設置された熱交換器に送られます。通常はお湯そのものではなく、熱交換器を介して熱のみを家庭に供給し、その量を計測することで請求額を決定します。最新機器を使った場合は、各家庭が供給パイプから送られる高温高圧のお湯を熱交換器を介さずに利用することができるとのことでした。なんだろ、やっぱりロスが減るのかな?

158IMG_1796さて、以上で今日の視察は終了です。最後に車窓からギュッシングの街並みを観光しつつ民宿を目指します。旧ギュッシングの市街地と思わしき地点に差し掛かると、その中心地でしょうか、古城が目に飛び込んできました。さらばギュッシング!

夕方17時ごろ、一行は民宿Gasthof Gerlinde Gibiserに到着しました。2階建ての一階部分はレストランという、日本の片田舎にもよくある感じのタイプでした。一泊55ユーロと宿泊費はリーズナブルでしたが、食欲旺盛なみなさんにかかる食費は馬鹿になりませんね。珍しさも手伝って、うさぎや鹿の風変わりな料理、それから地ワインを頼むうちにウィーン市内での食事費の1.5倍は超えました。

今日の視察は特に勉強になりました。木質バイオマスにおける熱利用の重要性についていやというほど思い知らされていたわけですが、かたや高知県内にはまとまってこれを利用する施設が多くありません。これは大きな宿題です。製材所があれば木材乾燥なども考えられますが、そんなにたくさん必要なわけではないしこれは困ったなと。そのような悩みにヒントを与えてくれたのがギュッシングのバイオガス施設でした。ガス化すれば保存も可能ですしね。確か日本ではまだコストが高いのでダメとの評価でしたが、実際に稼働し利用されているところを見るに、ちょっと検討してみる価値があるのではないかと思った次第です。もう一点、やはりしっかりとした啓蒙活動をしなければいけないということです。もちろん最初はパイロット的な取組を行って、まわりにその成果を確認させるという手順が必要でしょう。その後は1にも2にも勉強していただいて、輪を積極的に広げていかなくてはいけませんね。

(その5に続く?)

砕氷船しらせ入港

高知新港に砕氷船しらせが入港しました!一般公開は28-29日の09:00-15:00です。ぜひ見学にお越しください。駐車スペース500台ありますが、08:30より高知駅からシャトルバスも出ておりますのでご利用くださいませ。

砕氷船しらせ
基準排水量: 12,650トン 最大速力: 19ノット
軸出力: 30,000馬力 ディーゼル電気推進
乗組員約175名、観測隊員等80名
大型ヘリCH-101 2機搭載
就役: 平成21年5月

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砕氷船しらせは文部科学省所属、海上自衛隊運用の艦船で、主たる役目は昭和基地およびその周辺海域にて展開される南極地域観測の支援です。具体的には、昭和基地への人員と物資の搬送やその途上における環境モニタリングを行います。

しらせの砕氷能力は、氷厚1.5メートルの平坦海域であれば3ノットで連続砕氷可能とのこと。また、氷厚が1.5メートルをら超える場合は、助走距離を200〜300メートル確保し、最大馬力で氷に体当たりするとともに氷に乗り上げ、艦の自重で氷を砕きます。

砕氷船しらせの高知への寄港は、平成10年の初代しらせを含めて二度目になります。前回は各地より一万人が見学に訪れたそうです。先ほど見学をさせていただきましたが、一見の価値ありですね!

オーストリア視察-その3

連番を振ってしまったからには書かないわけにはいかない!?

9月16日
ついに視察初日に辿り着きました。感慨深いものがあります。
ホテルの朝食はビュッフェ形式、ホテルはどこものこの形式ですね。6時半からパパッと仕上げるとお隣のシェーンブルン宮殿に散歩に向かいます。実はこの時、となりにあるのは只のだだっ広い公園だと思っていました。

公園に足を進めたは良いものの向かいの道に終わりが見えません。また植林の枝葉を使った幾何学的な意匠に圧倒させられていたところに飛び込んできたのがシェーンブルン宮殿でした。

あっと言う間に出発の時間、一時間は歩いたかな?部屋をまとめてホテルのロビーに向かいます。
通訳のエヴァさんがすでにスタンバイしており、全員が揃うとすぐそばの地下鉄の駅に向かうのでした。

U-Bahn_Wienホテル最寄りの駅がHietzing、緑のU4の西端から5駅目です。一行はLandstraβe駅のU3線乗り換えで東端のSimmeringを目指します。市内の主要な公共交通は公営であることから、バス、トラム(路面電車)、地下鉄を問わず同じ切符で相互乗り入れが可能です。切符は乗車可能時間や距離によって様々な種類がありますが、現地の方は年間定期(350ユーロくらい?)を所持するのが一般的とのことでした。私達は24時間使える切符を買いました。改札にはスタンプマシンが2個設置されているだけで出入りは自由自在。無賃乗車対策は抜き打ちのチェックによって行っているそうです。違反時のペナルティが厳しいらしい。

Simmeringの駅に到着すると路線バスに搭乗、もちろん切符は一日同じものを使います。5分も揺られると目的地と思しき大きなプラントと2本の煙突が見えてきました。敷地入口が見つからず20分ほど彷徨ってしまいました。

[Vienna-Simmering Biomass Power Plant]
IMG_4415インストラクターはボランティアのハッカー氏。懇切丁寧にお話をしてくださいますが、どちらかと言うとプラントの技術面にウェイトが寄っていましたが、一行の興味は残念ながら金銭はじめ運営面にあるのでした。いろいろと申し訳ありませんでした。

さて、このプラントはもともと他の用途に利用されていたものを改築して現在に至っているようです。敷地内にはガスコンバインドサイクルの発電機が3基と、バイオマス発電機が1基設置されています。

<概要>
2001年計画、2006年運転
プラントの構成: 燃料置場、サイズ超過の材や金属の除去装置、燃料サイロ、CFBボイラー、窒素収集触媒、復水タービン、ガス浄化装置
プラント出力: 66Mw
うち 発電: max 24.5MW 熱供給: max 37.0 MW
熱利用効率: 平均50% (夏37%、冬80%)
燃料: 含水率42% 木質チップ(ブナ7割、トウヒ3割)、供給圏半径50-80km(国内(7割)および国外(3割)チェコ、スロバキア、ハンガリー含む)
稼働時間: 年8000時間
燃料消費量: 75㎥/h消費(24トン相当) つまり600,000㎥/年
補助金: 施設にEUおよびオーストリア政府
売電価格: 市場価格の3倍、約10.5セント/kw 円換算で約13円/kWh、但し13年間の2019年まで
年間熱供給総量: 平均167GWh
燃料保管用サイロサイズ: 7,500㎥  チップの保管期限が4日 24hrs/day × 4 days × 75㎥/hrs

ウィーン市内(人口171.3万人)の電力需要量に対する当バイオマスプラントの寄与率は2%弱、ガスコンバインドサイクルの合計発電容量が1100MWであることを併せて考えると都市部のミドル電源にすらなりえないなぁというのが正直な感想。燃料となるチップ材供給の物理的限界を考えると、木質バイオマス発電はもう少し小規模な地域への熱電併給のために利用するほうがベターだろう。ちなみに発電出力24.5MWというのは、高知県で建設予定のものの約4倍に相当する。燃料チップは、発電所から5kmほど離れたドナウ川の河川敷周辺に集められた丸太からチッパー(350㎥/h)で作成。そこから一日あたり30台のトラック(95㎥)で搬送しているとのこと。国内供給の7割は、プラント運営会社の共同出資者でもあるオーストリア森林管理局株式会社(国有林を管理)から調達。フライアッシュ(燃焼灰)は粒度により用途が分かれているようで、一番粗い物は舗装材などに混ぜて、細かいものは自然に返して(埋めて)いるそうです。

しかし日本の半分程度の売電価格とは恐れ入りました。固定価格買取制度の継続年限終了後、2019年以降のプラント運営が問題になるとのお話でしたがさもありなん。しかし、夏と冬の熱利用効率に加えて、夏の発電量が24MW対して冬が14MW(わざと絞ってる)であることを考慮すると、Simmeringの条件下ではさっさと発電やめて熱供給だけに絞ったほうが良いなぁと運営は考えているようです。

 

Simmeringの視察を終えて一行はオーストリアの環境省に向かいます。30分ほど時間があったので昼食をと、環境省前の城壁?という名前の食事処に寄りました。日替わり定食を頼むとカツレツが出てきました。店の名前が旧市街を取り囲んでいた城壁に由来するものだそうです。

環境省ではお二人の方から挨拶と説明をいただきました。話の内容はオーストリアのエネルギー政策の現況とこれから、考え方についてです。(この部分については資料が届き次第追記します。たしか投資効果なども定量的評価を行っていたと思います。)

140環境省を出た後は再度地下鉄を利用してホテルへ。
ホテルではAUSTRIAN ENERGY AGENCYのガーター・パウリッシュ氏を迎えて三度エネルギー政策についての勉強です。会場にはホテルの喫茶店を利用しました。
AUSTRIAN ENERGY AGENCYは日本風に言えばエネルギー協議会のようなもので、構成メンバーは政府系組織・自治体・公営企業・民間企業と多岐に及びます。

レクチャーの内容については上のギャラリーに基づいてお話します。(図01) オーストリアと日本の比較からはじまりますが、太字の部分が彼が強調したいところ。まず原子力発電はありません、森林率は日本よりも低いですが、ヨーロッパで最も高い47.2%を誇っている。バイオマスからエネルギーを213.1ペタジュール得ていることがわかります。読む側としては、オーストリアはバイオマスエネルギーに力入れてがんばってますねと受け取ればいいと思います。
図02は、EU27ヶ国の目標に関するお話です。RES (=Renewable Energy System) は再生可能エネルギー(1人あたりGDPによる補正有)と読み替えていただいて、その2005年時点のシェアを2020年には図のようにするというお約束をしたという話です。ATがAustriaで、23.3%を40%に引き上げると書いてあります。
図03はオーストリアエネルギー政策の3つの柱について書かれています。

  • 再生可能エネルギー
  • エネルギー効率
  • エネルギーの安定供給(安全保障)

図04はエネルギー需要の将来予測。単位はペタジュール。オーストリア政府は、2020年までエネルギー消費量を増やさないと言っています。経済活動の拡大によって純増すべき部分はエネルギー効率を上げることによって圧縮し、さらには再生可能エネルギーの比率を24.4%から34%に引き上げます。
図05は全エネルギー消費量における再生可能エネルギー由来の占める割合。一般にエネルギーと言った場合は、電気だけでなく熱利用なども含みますので気をつけて読む必要があります。再生可能エネルギーが29.3%を占めており、さらにその内訳は58.9%がバイオマス由来、36.6%が水力由来とのことです。
図06は図05の再生可能エネルギー分の詳細です。単位はテラWhです。1Wh=3600J
図07は2010年、新規に導入された再生可能エネルギー発電の内訳です。数値にコンマを打っていますが、セミコロンに置き換えていただければ読めると思います。伸びは水力がダントツで、火力がこれに続きます。
図08は水力のうち流れを利用したタイプを紹介しています。これだけ大規模のものは、水量の多いドナウ川あってのお話ですね。
図09はオーストリアの電源構成です。ほとんどが水力を占めていると言いたいのだと思います。が、そういうことであれば高度成長期までは日本も同じようなもので、解釈するとなれば経済規模や産業構造等の要素抜きには語れない部分です。ですので数字の通り読めばいいと思います。
図10、オーストリアの高圧送電網と変電所について書かれた図です。日本人が読むときには、隣国につながっているところに着目すべきです。あとやはりこちらでも系統接続の問題(発電所の発電能力と送電線の容量上限から生じる接続に関する種々の問題)はあるとの答弁をいただきました。
図11は、政府の政策的支援のもとで2012年はどのように新規に再生可能エネルギーが導入されているか表しています。風力が躍進しています。
図12は図11の導入量を受けて、実際に生成されたエネルギー量はどうかについて、構成別に書かれています。
図13は売電価格の推移を表したものです。水力以外のすべての電力源が補助金に依って成り立っています。
図14は、再生可能エネルギー推進によって、各段階でどれだけの雇用が発生しているかを表しています。赤が開発段階、緑が運営段階で生じている雇用をそれぞれ表しています。

資料と説明的にはオーストリア環境省の説明と重複する部分がありましたが、確認もできて大変勉強になりました。

説明が終わりますとみんなでイタリアンレストランに向かうことになりました。途中で雨に降られましたが、これはきっと歓迎の雨・・・

オーストリア視察-その2

さて、本題に入る前にオーストリアの概略について説明します。

人口: 836万人 面積:83,870k㎡ 公用語:ドイツ語
GDP:2,822億ユーロ/年(今のレートで36兆円くらい?)
主要産業:自動車産業および鉄鋼業
森林面積:約4百万ha 森林率:47.2%

人口は大阪府程度、面積は北海道よりやや大きい程度です。かついてはハプスブルク家が統治しており、全盛期には、今のスペインや、イタリア、シチリア、ボヘミア、ハンガリーや東欧までもを領地として支配していました。広いですねえ。GDPは愛知県(2010)とほぼ同程度です。国土は東西に長く、その形状は東向きに進む筋斗雲といえばイメージできるでしょうか?領地のやや北寄りを東から西に縦断するようにドナウ川が流れています。森林面積は北海道の7割です。アルプスが国土の62%を占め、東はなだらかな平野部ですが西に進むほど山が険しくなるといった特徴があります。

ちなみに中西哲県議が詳しい視察記事を公開済みですので、そちらも併せてご覧ください。
サトシのキーワード「日々雑記」

9月15日
関西国際空港を10時過ぎに出発しました。
KLM航空の航空機に搭乗し、約11時間のフライトを経てオランダのアムステルダム空港に到着。正直もうこの時点でヘロヘロ、足はむくんで睡魔に襲われていました。
トランジットのために同空港にて2時間を過ごした後に、さらにKLM航空のオーストリア行きに搭乗。夜の19時過ぎ(現地時間)についに悲願達成、ウィーン空港に無事降り立つことができました。
日本時間でおよそ3時・・・、眠いはずですね。

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856空港にて今回の旅のコーディネーター兼通訳者、エヴァ・ハイブさんと無事に合流すると、一行はジャンボタクシーに搭乗してホテルへ。車窓から見える景色は市街地に近づくに従い目まぐるしく変化します。空港を出て間もない頃は恐ろしくなだらかな起伏をもった大地に牧草(多分)が繁茂するだけだったのに、(新)市街地が近づくにつれどこでも見掛けるようなコンクリート構造物が軒を連ねるようになりました。中心部に近づくと、旧市街ならではのバロック調の過剰装飾が施された中層構造物が文字通り連続して立ち並びます。なぜ彼らは建物間に隙間を作らなかったのだろう・・・寒いからかななどと考えたものです。寒さといえば、オーストリアは北海道と同じくらいの緯度にあって、冬の気温は当然氷点下、夏でも最高26,27度までしかあがりません。したがって旧市街の古めかし建物には必ず暖炉と煙突が備えられているのです。

さて、そうこうしているうちにホテル『Austria Tend Parkhotel Schonbrunn』に到着しました。すぐ向かいには、ハプスブルク王朝の歴代君主が離宮として利用したシェーンブルン宮殿が鎮座しており、ホテルはかつてその迎賓館として利用されていたそうです。ホテルのエントランス横には、エジソンが同宮殿の電気配線工事した時にここに泊まりました的な案内板がありました。

IMG_1709部屋に空きがあるということで宿泊費の変更なくグレードの高い部屋に案内されました。朝食別で一泊105ユーロ程度だったと思います。写真には写っていませんが、左側にはムダに広いバスルームがあります。天井も高い家具も格調高い、きっと光熱費も高い、日本のビジネスホテルとは大違い、こんなんで経営大丈夫なのかなと心配になってしまいました。おおよそ、同じ建物を更新することなく何百年と使っているので、ストックがある分安く提供できるのだろうと勝手に結論。デメリットは当然あって、当時の建築規格内で今日的機材を導入しなければならないわけで、非常階段などは見当たらないしエレベーターも極めて狭く作らなくてはいけないようでした。2,3人で手狭になるエレベーターは問題だと思う(笑)

さて、そのあと近くのご当地居酒屋で晩ご飯を済ませて、現地時間の12時過ぎに就寝しました。起きたのは4時…時差で寝たくても寝られません。

(その3に続く)

前半でこんなに作文を頑張ってしまうと、肝心のところがヘタってしまいそうで心配です。

オーストリア視察-その1

オーストリア視察について順に掲載します。

9月14日

オーストリア視察に出発する日です。目的はCLT (Cross Laminated Timber) と再生可能エネルギーについて見聞を深めることにあります。CLTについては、本県の高知おおとよ製材で生産予定であり、また再生可能エネルギーについては仁井田と宿毛で木質バイオマス発電プラントが稼動予定です。オーストリアは両取組の先進国であることから、ぜひともこれを見てみたいという中西県議の発案から今回の視察が実現しました。

CLTもバイオマス発電も名前は聞いたことがあるけれど…といった人のために簡単に解説をします。

CLTとはクロスラミネイティッドティンバーの略称で一種の集成材・合板です。一般的な集成材は個々の板材を平行に張り合わせて作成しますが、CLTは同様の板材の2層目以降をそれぞれ90度回転させて重ねることによって作成します。ゆえに個々の板材の持つ歪みや強度といった性質がある程度均質化されます(従って、これまで材料にできなかった品質の低い板材も利用可能です)。これは品質が厳しく問われる工業製品にとって非常に重要な性質です。まあ、合板(ベニヤなど)ですでに実現してるじゃないかと言われればそうなんですが。このCLTですが、強度も高く壁材に使うことで中層建築物も作成することが可能です。
(国交省参考リンク)

もう一つの木質バイオマス発電について説明します。これは至ってシンプル。木を燃やして水を加温・加圧し、タービンを回転させることで発電を行います。既存の原子力や火力とやっていることは変わりません。なぜいままで行われていなかったのかというと、既存の発電コストよりも高くつくためです。電力の固定価格買取制度(F.I.T)の導入により、電力会社が20年間、電気を特別に高値で購入することが義務付けられたために経済性が高まりました。古くて新しい木材の利用方法として日本各地で導入が検討されています。

さて、どちらも共通するのは木材を利用するという点です。高知県は84%の森林率ですが、昨今は材価の低迷により林業業界とそれを支える中山間が疲弊の一途を辿っています。ここにCLTや木質バイオマスといった新しい木材の利用方法を提示することができたならば、木材の消費量は増加し価格も上昇、ついては雇用の拡大や中山間の活性化につながることが期待されます。さらには、後に詳しく触れると思いますが域内キャッシュ・フローを増やすことにもつながり、高知県全体の経済の活性化に結びつく可能性があると考えています。

昨年も再生可能エネルギーの調査で訪れたオーストリアではありますが、今回はその発祥地であるギュッシングが訪問でき、CLTの工場も見学できるということで否が応でも期待に胸が高鳴ります。参加メンバーは私のほかに、中西哲県議、梶原大介県議、明神健夫県議、西内健県議の総勢5名です。(その2に続く…)

CLT視察

ヨーロッパに視察にきました。目的は大豊町で稼働中の高知おおとよ製材で生産予定のCLT(cross laminated timber)の将来性と課題について勉強するためです。ちなみに昨年に引き続いて再生可能エネルギーについても学んでまいります。

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祝2020年東京五輪招致決定!

2020年の東京五輪招致決定おめでとうございます!大変な慶事、偉業ですね。関係各位および日本国民の一体となった取り組みの成果です。そして選ばれたからには、2020年の責務を果たすべく力を合わせて頑張って参りましょう、よろしくお願いいたします!m(_ _)m

追記
さて、ここで気になるのが前回の審査には落ちてなぜ今回なのかということです。前回も今回もハード面や経済安定性および安全性については、東京が候補地の中でもピカイチであることは間違いありません。
とすればソフトの部分はどうでしょうか。選手団や元選手を動員した積極的なPRはもちろんですが、一番の要因は大多数の国民が東京五輪招致の実現を望み行動した点にあるのではないかと思います。

国民の気持ちがそのような方向に転じた大きなきっかけとして、前オリンピック大会での各競技における日本選手の活躍も大きいでしょう。しかし東日本大震災で見せた日本人の姿を抜きに語ることはできないように思います。私心を捨てて他者を思いやり、力を合わせて物事をなしたとき、普段の経済的合理性などと論じている見地からは想像もつかないような、大きな可能性を見出すことができることを知りました。大震災前までの、わかっちゃいるけどそんな勇気はございません、見て見ぬ振りとは大きな違いです。

そして、良い方向へと進み始めた歯車はさらに勢いを増します。さらに力を合わせることでもっとできることがある、日本をよくすることができるはずだと。

しかし一連の流れの中でオリンピック招致とその成果は本当に時宜を得たものとしか言いようがありません。この流れをより正しく確固たるものにするために、この流れはどこから来ているのか、どうして当たり前のように生じたのかを探ること、つまりはしつけの親さがしをする段階に来たと私は考えています。

はや70年、遅すぎるということはないと思います。喜んでお手伝いさせていただきます。