ホワイト国リストからの韓国の除外について

 8月2日午前、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」のリストから韓国を外す政令改正を閣議決定した。この決定に基づき、8月28日に実際に韓国がホワイト国から除外されることとなる。
 周囲の人に聞く限りにおいて、政府この対応について肯定的な声はあれども、いまだ批判的な声を拝聴したことがない。ここ数年来の日韓関係について、各々思うところがあったのだろうと推察される。

 本件を記事にしようと考えた動機は、ある特定の新聞や報道、インターネットニュース、個人ブログ等で、本措置が規制強化であるとか、徴用工問題に対する対抗措置であるといったミスリードがあまりにも目に付くためである。
*大手新聞社によるミスリードの問題については、門田隆将著の『新聞という病』を読まれたい。大変面白かった。

 ホワイト国リスト除外の少し前、7月25日にLee教授と参議院議員松川るい先生が日本外国特派員協会において公開討論を行っている。松川るい先生は、日本政府の立場を簡潔明瞭に説明されていると感じた。
 のっけから英語で挨拶をしているが、心配は不要です。日本語でのスピーチもありますので時間に余裕のある方は、ぜひ最後までご視聴いただきたい。以下にその要点をまとめました。


◎7月4日、半導体やディスプレイの製造に必要な感光材(レジスト)、エッチングガス(フッ化水素)、ディスプレイ用樹脂材料(フッ化ポリイミド)という3品目について、従来の簡略な手続きを改め、個別の輸出許可申請をもとに輸出審査を行う方針への切り替えが行われた。
◎ホワイト国から外すという方針が示された(この時点では閣議決定していない)
◎これらは輸出『禁止』でも『規制』でもない。
◎今回は安全保障の観点から、韓国に対する輸出管理の運用を見直す。
◎輸出管理とはミサイルや化学兵器といった大量破壊兵器、革新的軍事技術といったものに応用可能な安全保障上の機微に触れるものの拡散を防ぐこと。
◎輸出管理体制の変更は、GATT/WTO 一般規則第21条において、安全保障上の例外として保障されており、自由貿易と矛盾しない。
◎したがって、このような物品の管理を適正に行い拡散を防ぐことは、責任ある国際社会の一員として当然のこと。
◎輸出管理制度は、国際的な信頼関係の下に運用されるもの。
◎韓国は、通常兵器のキャッチオール規制が未導入であるなど、輸出管理制度がもともと不十分であったが、
◎二国の当局間の定期的な協議によって、その場において情報交換や要請をすることにより、韓国の不十分な点を補いつつ、信頼関係を前提として輸出管理制度を運用してきた。
◎しかしここ3年程、日本の申し入れにもかかわらず協議が行われなかった。制度の見直しや運用の改善が行われなかった。
◎こうしたことを受けて、安全保障上の観点から、輸出管理制度を適切に運用するためこのたびの見直しとなった。
◎韓国政府の発言や韓国の報道において、日本政府の一連の措置は旧朝鮮半島出身労働者問題に対する日本側の対抗措置ではないかと言われていますが、ことほど左様に、今回の輸出管理の見直しはあくまで安全保障上の観点から行われたものであり、対抗措置ではない。
◎本件は、突然に降って湧いた議論ではなく、日本側では長いこと問題視され議論されていた。
◎ホワイト国からの除外は、輸出をできなくするものでもない。通常の国と同じように、手続きを経ることで日本からの輸出を受けることができる。
◎なお、ホワイト国リストの認定は、それぞれの国の裁量である。
◎韓国が今後やるべきことは、国際会議で日本を非難することでなく、自国の輸出管理体制を見直し充実化すること。日本の120人で輸出を管理しているが、韓国は11人である。通常兵器のキャッチオール規制の導入をするなど、信頼関係を取り戻すための措置をとること。
(以上)

 このあとも日韓基本条約のことなど重要な話が続きますが、ホワイト国の話からは離れますので触れません。ざっと目を通していただければ、日本はやるべきことをやっただけで、韓国から非難される謂われはないことがおわかりいただけると思います。
 安全保障上の理由でこのような措置をとったということは、今後どれだけ騒ごうが誰が仲裁に入ろうが、韓国側において必要な是正措置がとられない限り、以前のような状態に戻ることはないと思われます。日本やアメリカ政府高官が日韓関係についてこう言った!などといった出所不明な発言をもとに書いた記事の見出しに踊らされる必要もありません。

今そこにある危機

北朝鮮の暴走によって、日本は危機的状況に追い込まれつつある。

日本のおかれている状況について比較的詳しく記事を書いているのは産経新聞だと思う。熱心な読者にはおさらいになるが、北朝鮮の暴走によって浮き彫りになった日本の問題について書く。

まず、アメリカと半島国家の間で起ころうとしている戦争に、我が国が巻き込まれようとしていると、多くの日本人が考えている点を挙げたい。
いやそうではなく、我々は当事者国なのだ。17日の産経朝刊だったか、日清戦争にいたる経緯について簡潔にまとめられていた。当時の日本の為政者は、地政学的観点から朝鮮半島を日本の利益線の内側に位置付けていたが、それは朝鮮半島が不安定化すれば日本海を挟んで隣接する日本の安全は揺らいでしまうから何とかしなければならないと考えたからである。安定化のための介入の結果起きたのが日清戦争であり、日露戦争である。
いまの北朝鮮の問題と何が変わろうか。核搭載ICBMの開発に成功すれば、極東におけるアメリカの軍事力プレゼンスは低下する。北朝鮮は、軍事力を背景にその時日本に何を要求するのだろうか、想像するのも恐ろしい。
朝鮮半島有事は、我が国の有事でもある。

北朝鮮の様々な攻撃に対処できない。
潜入工作員が重要インフラにテロをしかけてきたらどうなるだろうか。原子力発電所には、武器をもった警備員が配置されていない。あるいは通勤時間帯の地下鉄に毒物を持ち込まれたらどうなるだろうか?必要な法整備がすすめられず、諜報機関を軽視してきたツケがめぐってきた。人の多い東京ならどこでも、工作員は効果的なアクションが可能である。
北朝鮮が力の象徴とする弾道ミサイルなどは対処できないものの最たるものである。正確を期していえば撃ち落とせないわけではない。しかし日本を射程におさめたニ百発を超えるミサイルによって飽和攻撃が行われた場合、日米が協力してその迎撃にあたったとしても、そのすべてを撃ち落とせるわけではない。
日本のイージス艦一隻が一度に追いかけて迎撃のできる弾道ミサイルは1発である。アメリカはアップデートされたイージスシステムを搭載しているので、一隻あたり10程度の目標を同時攻撃できるが、飽和攻撃に投入されたミサイルのすべてを撃ち落とせるわけではない。
日本国本土の主要都市・基地周辺には、大気圏内の日本上空で弾道ミサイルを撃墜することのできるPAC‐3が配備されている。しかしこれとて万能ではない。上空で弾道ミサイルを撃ち落とせば、破片や毒ガス兵器などの内容物が主要都市に降り注いでくるのである。もし核弾頭がその中にあって上空で爆発すれば、EMP(電磁パルス)を生じ、航空機が制御不能に陥るのみならず、インフラをはじめ重要施設の電子機器が破壊されてしまうだろう。万が一核弾頭が山手線内に着弾すれば、少なくとも山手線内は灰燼に帰す可能性が高い。

難民の問題もある。戦争がはじまれば、在留邦人の引き上げはもちろんのこと、日本に避難してくる朝鮮人も存在するだろう。その数は数十万あるいは数百万人にも上るかもしれない。果たしてこれだけの人間を引き受けられるだろうか。

しかも北朝鮮の問題は先送りすればするほど、日本を含む関係国の被害と事後処理が大変になる。

果たして、北朝鮮に平和裏に核兵器を放棄させることができるであろうか。私は極めて難しいと考える。北朝鮮は(中国もだが)力こそが、自分たちの行いを正当化させ、生存権を確保せしめ、相手を従えさせることのできる唯一の手段であると確信している。ゆえに、彼らはその力を手に入れるために必要なありとあらゆる犠牲を許容するであろう。
もし今回、アメリカが軍を引くことがあっても、朝鮮半島有事は遅かれ早かれの既定路線なのである。

(大きすぎる授業料を払うかもしれないことによって)我々が学ばねばならないことは、平和のために真面目に軍事を学びそのバランスをとる努力をしなければならない現実についてである。政治家はもちろんのこと、国民も義務教育をはじめ様々な段階で軍事の基本について学ぶ必要があったのだがそれをしてこなかった。アメリカに軍事を依存してきたことと不勉強の代償であるが、国政の場で日本の安全を確保するために必要な戦略・戦術について語れる政治家は少ない。また当然国民も関心を示さない。だから必要十分な防衛措置が講じられないまま、北朝鮮に対しても核開発を途中で挫折させるような、かつてイスラエルがイランに行った妨害工作のような対処を講じることができなかった(中には防衛的先制攻撃とは認められないものもあったが)。

われわれに降りかかる火の粉はこれだけではない。数年内には西南諸島でも何かしらの動きがあるといわれている。この先ひとりでも多くの国民の生命を守るために、今回の騒動を契機として、平和のための軍事について真剣に語る機会・学ぶ機会を増やさねばらなないと考える。



いわゆる慰安婦問題について

*読みやすくするために少し手直ししました(平成30年1月11日)

平成27年もまた激動の一年でしたが、年の暮れにとてもインパクトのある出来事がありましたので少しコメントさせていただきましょう。

12月28日、岸田文雄外相が韓国を訪問し、いわゆる慰安婦問題について外相級会談を行いました。記者発表されたその内容については下記外務省サイトにて確認することができます。

平成27年12月28日_日韓外相会談
(参考)河野談話

さて、以下の文章はみなさんが外務省サイトで発表内容に目を通しているという前提で書かせていただきます。
会談の発表のあった29日、巷では日本の外交的敗北のようなことを言う人がいましたが私は決してそうではないと考えます。しかしこの件に関して、これ以上韓国に譲歩することが感情的に受け入れられないという方がいらっしゃるのは大変よく分かる話ではあります。 “いわゆる慰安婦問題について” の続きを読む