講演会成果報告並びに集団的自衛権に関する閣議決定

「日本の自立、高知の再生」vol.02 無事に終えることができました。
日曜の多忙の時間にもかかわらず、ご参集くださいました皆様に心より御礼申しあげます。

講師としてお招きした伊藤哲夫先生は、保守のしっかりしたシンクタンク、情報発信源が無くてはならないという使命感から、今から30年前に日本政策研究センターを立ち上げられました。
今日までたくさんの政治家と交流をし、彼らのみならず日本国家に対して多大なる貢献をされております。私と先生の出会いは、日本会議を中心とするグループ主催による講演会でありまして、以後、月刊誌「明日への選択」の購読を行い、本部で開催されている勉強会等にも参加させて頂いております。

今回は伊藤先生の日本国憲法改正に関する考え方をみなさんに聞いていただきたくこのたびの運びとなりました。

伊藤先生のお話はやはり大変わかりやすい。集団的自衛権の行使にかかわる解釈改憲の話から現行憲法の問題についてお話し頂きました。

まず昨今のマスコミや解釈改憲反対論者たちは、安倍政権が戦争をするために解釈改憲を行おうとしているとの論調をとっているが、その前提はおかしい。政府・与党による再三の説明は、戦争が起きないように、抑止効果を高めるために一連を手続きをとっているのである。また歴史の教訓や安全保障環境に関する国際情勢動向についても充分に注意を払っていかなくてはならない。

昨今の中国やロシアの動向は、第二次世界大戦を引き起こしたドイツの動きに似ているという。第一次世界大戦で繰り広げられた国民国家による国家総動員戦争によって、たくさんの命が失われたことに対する反省から、戦後は第二次世界大戦後以上の反戦・厭戦気運が高まりを見せた。この間隙を突く形で台頭したのがヒトラー率いる国会社会主義ドイツ労働者党である。ヒトラーは、オーストリア在住のドイツ系住民の保護を名目にドイツ軍を同国内に進駐させ、オーストリア併合を成し遂げる。これを制止すべき立場にあるイギリスやフランスをはじめとする周辺諸国は、第一世界大戦後の厭戦気運と戦争は起きないとの楽観的見通しのもと十分な干渉を行わなかった。これに味をしめたドイツは、チェコ・スロバキアに対してもドイツ系住民保護を名目にズデーテン地方の割譲を迫る。イギリスとフランスの首相の仲立ちによって、チェコ・スロバキアはドイツが軍事侵攻をしないことを見返りにズデーテン地方の割譲を決定する。いわゆるミュンヘン協定である。一連の出来事によりイギリス・フランスによる軍事介入の恐れがないことを確信したヒトラーは、その後、チェコ・スロバキア内での独立運動を扇動し、同国の解体を行い、ついにチェコ・スロバキアは消滅してしまうこととなる。次の目標をポーランドに定めると、同国との不可侵条約を破棄し、ドイツとの不可侵条約を締結。1939年9月1日にポーランド攻撃を開始した。これを受けて、イギリス・フランスは9月3日にドイツに宣戦布告をする。これが第二次世界大戦のはじまりである。

どうだろうか、非常に既視感の強いお話ではないだろうか。世界各国では、いまの中国が当時のドイツのようだと囁かれている。中国は国境を接する周辺諸国に対して、これは元来自国領であるとの主張を行い、南沙諸島しかり軍事侵攻を行って実効支配を繰り広げている。日本に対しては沖縄・尖閣諸島をめぐって様々な圧力がかけられていることは周知の事実である。このような中国にとっては、昨今のシリアやウクライナ問題に対する国際社会の対応、とりわけアメリカの動きは好ましいものであろう。

中西哲県議のブログにもある通り、アメリカの軍事費の削減、オバマの「アメリカは世界の警察官ではない」発言等を受けて、中国の膨張政策はますます活発化の様相を見せている。日本にとっても中国の動向はもちろん脅威であるが、さらには、アメリカのアジアにおける軍事的プレゼンスを補完する形で防衛戦略を構築し、アジアの安定、日本の安全保障環境の充実を図らなくてはならない局面にある。

アメリカが日本縁辺のきな臭い地域において情報収集を行う軍用機(偵察機)を運用しているがこれには当然護衛機も必要となってくる。関連して後方支援等も必要であろう。彼らがリスクに晒されているのに、あるいは攻撃を受けた際に、当事者とも言える日本が何もしないというのではお話にならない。そのような安全保障体制というものは本当に機能するのかと言う話も出てくるはずである。

以上が集団的自衛権に関するお話である。憲法については、倉山満先生の講演を紹介した内容と重複する部分がある。マッカーサーは初期対日方針に従って占領政策をすすめ、マッカーサー・ノートによって憲法の骨格を指示した。
その主たる目的は、日本をアメリカはじめ連合国に対して二度と逆らえない国にすること、アメリカの属国化することにある。サンフランシスコ講和条約発効以降、我々日本人は、いくらでもこれを訂正する機会はあったわけであるが、今日まで遂に成し遂げることができなかったし、そういった世論も充分に醸成することができていない。GHQの占領政策がいかに効果覿面であったかということか。昭和憲法破棄、明治憲法復活をしてはどうかという質問に対しては、建物の耐震化に例えて見事な返答をしていた。例えば、将来襲い来る地震に耐えられない建物に住んでいるとする。貯蓄は耐震化するには足りるが、新築を考えるには程遠い状況にあるとする。そのような状況で新築という選択肢はとりえない。これは昭和憲法破棄、明治憲法復活が現実的でないということを示唆した話だ。

さて、ここまでが私の補足を加えつつ伊藤哲夫先生のお話概略である。
そして昨日、7月1日の夕刻、安倍内閣によって集団的自衛権行使にかかわる解釈変更の閣議決定が行われた。昭和21年の吉田内閣から、昭和56年の鈴木内閣までの間に行われた6度の解釈変更に加えて、今回で7度目の変更となる。その解釈の範囲は、1959年の砂川事件最高裁判決によって示された『9条は「わが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定して」おらず「わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使であ」る』との司法判断を超えるものではない。昨今巷で立憲主義の危機、解釈改憲言語道断などと声高に叫ぶ人たちがいるが、もう少しきちんと勉強をして、正しい情報発信を心がけてもらいたいものである。

何にせよ一連の結果は、戦争が起きないよう抑止効果をいかに発揮させるか、国家の安寧をいかに担保していくかということを真摯に考えたならば、必然的にたどり着くところであろう。まだまだゴールは言い難く、また1952年4月28日サンフランシスコ講和条約発効から62年という長い時間を費やしてしまったが、今回の一歩が意義ある一歩であることには違いない。