ケント・ギルバートx伊藤哲夫先生講演概要

お約束からすっかり時間が空いてしまいましたことをお詫び申し上げます。
タイトルには両名の名前を書きましたが、実際の記事では伊藤哲夫先生の講演のみについて触れたいと思います。

まず導入はフランスのテロに触れて日本の憲法の緊急事態条項について。

あのテロは、従前に関係する情報を得ていたにも関わらず防げなかったという点において、警備当局の失態であった。しかし、その後の対応は実にしっかりとしたものであった。
非常事態宣言を発令し、第二第三の予定されていたテロを防いだ。さらに治安部隊にしても医療スタッフにしても、非常事態、テロを想定した入念な訓練が行われていた。非常事態に対処するための規定が憲法にない日本国において、同様の事態が迫り来る可能性は十分にある。特に来年の伊勢志摩サミットには、テロに対して屈しないとした世界各国の首脳が集まることになる。テロリストにとって、伊勢志摩サミットは攻撃目標となる可能性が極めて高い。
自分たちが平和を願っていれば、自分たちがいい人であれば、平和が維持できるというのは全くの神話である。という主旨を導入として語られた。
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オーストリア視察-その6

ついに視察最終日

[9月19日]
6時00分、散歩しましたので写真をご披露。


まず向かったのが前回も訪れた大きな教会。通訳のエヴァさんの話によると、今日のオーストリアでも無宗教の人が増えていて礼拝には行かない人もいるそうです。畏れ敬うことを通して分際を知るわけですから、無宗教とは褒められたことではないですね。
残念ながら教会はまだ開いておりませんでしたので、他の場所を訪ねてみることにしました。しばらく歩くと子どもたちがバスに乗って通学をしているところに出くわします。親が車で送迎というのはあまりなさそうですね。
次に目を引いたのがアーケード街、シャッターで閉めている店舗はありませんでした。通りのデザインが統一されていて良いですね。
その後旧市街の広場に出ます。中央には大きな像が立っていて、すぐそばまでトラムが乗り入れています。トラムの線路は北に延びてドナウ川を越えて北岸に続きます。ふと北岸にいってみようと思い立ちました。橋の上からは雄大なドナウ川の写真を記録。北岸はこれたいったものが、しばらくウロウロすると南岸の旧市街にもどってきました。以上朝の散歩でした。

本日訪問する先は実は昨年もお邪魔したところ。取組の内容が良いので今回はじめての人たちにもぜひ聞いてもらいたいということでメニューにいれました。ホテルからは徒歩5分、ビルの5Fの州立のアッパーオーストリアエネルギー局です。日本風に言えば行政系研究機関といったところでしょうか。応対くださったのはクリスティーヌさん、パワーポイントをつかって説明をしてくれました。

アッパーオーストリア州リンツ市は、人口138万人、面積96キロ平方メートル、主な産業は、工業、サービス業、観光であり、オーストリア輸出総額の25%を占めています。エネルギー局は、州の出資により1991年に設立され、エネルギー効率化と再生可能エネルギー普及促進をその主たる役目としています。顧客は個人、企業、行政と様々です。法規制や政策に関する提案も行います。大きな特徴としてはThe Oekoenergie-Cluster Upper Austria (OEC)と呼ばれる再生可能エネルギーとエネルギー効率化に関する企業群ネットワークを統括しているとのことです。
OECの売上高は22億ドル、雇用は7300人、アッパーオーストリアの輸出シェアの50%を占めています。


(図01)アッパーオーストリアにおける再生可能エネルギーの割合
総エネルギーの34%、熱需要の46%⇒削減された化石燃料輸入額で 10億ユーロ/年分
2030年までに・・・39%の熱需要を削減。電気消費量を0.5%/年の割合で削減、二酸化炭素排出量-65%減
(図02)バイオマス暖房のなぜ?

  • 持続可能かつカーボン・ニュートラルな燃料
  • とりわけビル等の暖房に適している
  • 最新型の暖房システムは低排出ガスで運転が自動化されている
  • エネルギー安全保障を高められる
  • 地域の林業経済を支えられる
  • 森の持続
  • 熱需要を減らす (断熱性向上)
  • 高効率、低排出唯一の設備、発電能力を備えた高効率CHP

→アッパーオーストリアは過去20年間、木質バイオマス暖房分野を開拓し、そして小型システムの分野において世界のリーダーシップをとるようになった
→EUに導入されている木質バイオマスボイラーの25%はアッパーオーストリアの会社によって製造されている

(図03) オーストリアにおけるバイオマス暖房の経済的インパクト
→関連雇用などの経済効果など
(図04) 典型的木質バイオマス暖房設備
→用途によって燃料やボイラーは様々
(図05) バイオマス暖房の導入量(MW)
(図06) 再生可能エネルギーのポテンシャル
→現在値と2030年の目標値
(図07) ニワトリが先か卵が先か論争を克服せよ
→できない理由ばかり挙げるのはやめたいですね
(図08) 図解エネルギー局の仕事 (ムチとニンジンとタンバリン)
→ムチは法規制、ニンジンが補助金、タンバリンが情報や技術
(図09) ムチとニンジンとタンバリンの解説
→この絶妙なバランスが重要だと思う。本県でもこれができれば・・・
(図10) バイオマス暖房に係る主要な政策

(図11) 基準(規制)を通した市場の活性化
→本県のペレット規格等も欧州を参考にすべきだった
(図12) 燃料と設備に係る規制を通じた市場の活性化
→図11の補足
(図13) 意識とスキルを高める
→最終消費者向けのアプローチも忘れていない
(図14) 研究と開発プログラム
→たぶん後述のOECクラスターが対象なのだろう
(図15) ビジネスモデル:バイオマスによる地域暖房
→本県でも検討に耐えるモデル
(図16) ビジネスモデル:バイオマス熱供給のリース契約
→普及のためには検討すべきモデル
(図17) バイオマス熱供給のリース契約

(図18) OECクラスター組織図
→エネルギー産業のクラスター
(図19) OECクラスターの効果

(図20) OECクラスターの構成

資料はすべて2012年訪問時のもの。説明は去年のほうが充実してたかなぁ。
当エネルギー局で特に参考になる部分は、ムチとニンジンとタンバリンのバランスの良い使い方。そしてOECのエネルギー産業クラスター。

本県でもメガソーラーや木質バイオマスなどの再生可能エネルギーを推進している。その施策の中身は、立候補した事業体に補助金を入れて支援するといったものである。しかしこれではどうしても受け身であり場当たり的な感が拭えない。私は本件については行政が主体的責任を負うようなリスクをとっても良いのではないか、いやそうでなければ形にならないのではないかと思う。詳細は(たぶん)その7に譲りたい。

IMG_1844最後の視察を終えた一行は、ホテルに戻ると荷物を持ってタクシーに。リンツ駅からウィーンを目指します。電車はやっぱりQBB。たしか私鉄も相互乗り入れをしていて、そちらは少し安く乗れたように記憶しています。駅で昼ごはんのマクドナルドハンバーガーを買いました。日本のものより大きいですね、写真を撮っておけばよかった・・・このあと約2時間かけてウィーンへ

ウィーンについた一行は地下鉄でホテルへ。ホテルは初日~2日目と宿泊したホテル『Austria Tend Parkhotel Schonbrunn』です。初日のように広い部屋というわけにはいきませんでしたが、それでも十分なスペースがありました。残された時間は市内をみんなで散策、夜は食後にシェーンブルン宮殿のクラッシックコンサートを少々かじって視察最終日を締めくくるのでした。

オーストリア視察-その3

連番を振ってしまったからには書かないわけにはいかない!?

9月16日
ついに視察初日に辿り着きました。感慨深いものがあります。
ホテルの朝食はビュッフェ形式、ホテルはどこものこの形式ですね。6時半からパパッと仕上げるとお隣のシェーンブルン宮殿に散歩に向かいます。実はこの時、となりにあるのは只のだだっ広い公園だと思っていました。

公園に足を進めたは良いものの向かいの道に終わりが見えません。また植林の枝葉を使った幾何学的な意匠に圧倒させられていたところに飛び込んできたのがシェーンブルン宮殿でした。

あっと言う間に出発の時間、一時間は歩いたかな?部屋をまとめてホテルのロビーに向かいます。
通訳のエヴァさんがすでにスタンバイしており、全員が揃うとすぐそばの地下鉄の駅に向かうのでした。

U-Bahn_Wienホテル最寄りの駅がHietzing、緑のU4の西端から5駅目です。一行はLandstraβe駅のU3線乗り換えで東端のSimmeringを目指します。市内の主要な公共交通は公営であることから、バス、トラム(路面電車)、地下鉄を問わず同じ切符で相互乗り入れが可能です。切符は乗車可能時間や距離によって様々な種類がありますが、現地の方は年間定期(350ユーロくらい?)を所持するのが一般的とのことでした。私達は24時間使える切符を買いました。改札にはスタンプマシンが2個設置されているだけで出入りは自由自在。無賃乗車対策は抜き打ちのチェックによって行っているそうです。違反時のペナルティが厳しいらしい。

Simmeringの駅に到着すると路線バスに搭乗、もちろん切符は一日同じものを使います。5分も揺られると目的地と思しき大きなプラントと2本の煙突が見えてきました。敷地入口が見つからず20分ほど彷徨ってしまいました。

[Vienna-Simmering Biomass Power Plant]
IMG_4415インストラクターはボランティアのハッカー氏。懇切丁寧にお話をしてくださいますが、どちらかと言うとプラントの技術面にウェイトが寄っていましたが、一行の興味は残念ながら金銭はじめ運営面にあるのでした。いろいろと申し訳ありませんでした。

さて、このプラントはもともと他の用途に利用されていたものを改築して現在に至っているようです。敷地内にはガスコンバインドサイクルの発電機が3基と、バイオマス発電機が1基設置されています。

<概要>
2001年計画、2006年運転
プラントの構成: 燃料置場、サイズ超過の材や金属の除去装置、燃料サイロ、CFBボイラー、窒素収集触媒、復水タービン、ガス浄化装置
プラント出力: 66Mw
うち 発電: max 24.5MW 熱供給: max 37.0 MW
熱利用効率: 平均50% (夏37%、冬80%)
燃料: 含水率42% 木質チップ(ブナ7割、トウヒ3割)、供給圏半径50-80km(国内(7割)および国外(3割)チェコ、スロバキア、ハンガリー含む)
稼働時間: 年8000時間
燃料消費量: 75㎥/h消費(24トン相当) つまり600,000㎥/年
補助金: 施設にEUおよびオーストリア政府
売電価格: 市場価格の3倍、約10.5セント/kw 円換算で約13円/kWh、但し13年間の2019年まで
年間熱供給総量: 平均167GWh
燃料保管用サイロサイズ: 7,500㎥  チップの保管期限が4日 24hrs/day × 4 days × 75㎥/hrs

ウィーン市内(人口171.3万人)の電力需要量に対する当バイオマスプラントの寄与率は2%弱、ガスコンバインドサイクルの合計発電容量が1100MWであることを併せて考えると都市部のミドル電源にすらなりえないなぁというのが正直な感想。燃料となるチップ材供給の物理的限界を考えると、木質バイオマス発電はもう少し小規模な地域への熱電併給のために利用するほうがベターだろう。ちなみに発電出力24.5MWというのは、高知県で建設予定のものの約4倍に相当する。燃料チップは、発電所から5kmほど離れたドナウ川の河川敷周辺に集められた丸太からチッパー(350㎥/h)で作成。そこから一日あたり30台のトラック(95㎥)で搬送しているとのこと。国内供給の7割は、プラント運営会社の共同出資者でもあるオーストリア森林管理局株式会社(国有林を管理)から調達。フライアッシュ(燃焼灰)は粒度により用途が分かれているようで、一番粗い物は舗装材などに混ぜて、細かいものは自然に返して(埋めて)いるそうです。

しかし日本の半分程度の売電価格とは恐れ入りました。固定価格買取制度の継続年限終了後、2019年以降のプラント運営が問題になるとのお話でしたがさもありなん。しかし、夏と冬の熱利用効率に加えて、夏の発電量が24MW対して冬が14MW(わざと絞ってる)であることを考慮すると、Simmeringの条件下ではさっさと発電やめて熱供給だけに絞ったほうが良いなぁと運営は考えているようです。

 

Simmeringの視察を終えて一行はオーストリアの環境省に向かいます。30分ほど時間があったので昼食をと、環境省前の城壁?という名前の食事処に寄りました。日替わり定食を頼むとカツレツが出てきました。店の名前が旧市街を取り囲んでいた城壁に由来するものだそうです。

環境省ではお二人の方から挨拶と説明をいただきました。話の内容はオーストリアのエネルギー政策の現況とこれから、考え方についてです。(この部分については資料が届き次第追記します。たしか投資効果なども定量的評価を行っていたと思います。)

140環境省を出た後は再度地下鉄を利用してホテルへ。
ホテルではAUSTRIAN ENERGY AGENCYのガーター・パウリッシュ氏を迎えて三度エネルギー政策についての勉強です。会場にはホテルの喫茶店を利用しました。
AUSTRIAN ENERGY AGENCYは日本風に言えばエネルギー協議会のようなもので、構成メンバーは政府系組織・自治体・公営企業・民間企業と多岐に及びます。

レクチャーの内容については上のギャラリーに基づいてお話します。(図01) オーストリアと日本の比較からはじまりますが、太字の部分が彼が強調したいところ。まず原子力発電はありません、森林率は日本よりも低いですが、ヨーロッパで最も高い47.2%を誇っている。バイオマスからエネルギーを213.1ペタジュール得ていることがわかります。読む側としては、オーストリアはバイオマスエネルギーに力入れてがんばってますねと受け取ればいいと思います。
図02は、EU27ヶ国の目標に関するお話です。RES (=Renewable Energy System) は再生可能エネルギー(1人あたりGDPによる補正有)と読み替えていただいて、その2005年時点のシェアを2020年には図のようにするというお約束をしたという話です。ATがAustriaで、23.3%を40%に引き上げると書いてあります。
図03はオーストリアエネルギー政策の3つの柱について書かれています。

  • 再生可能エネルギー
  • エネルギー効率
  • エネルギーの安定供給(安全保障)

図04はエネルギー需要の将来予測。単位はペタジュール。オーストリア政府は、2020年までエネルギー消費量を増やさないと言っています。経済活動の拡大によって純増すべき部分はエネルギー効率を上げることによって圧縮し、さらには再生可能エネルギーの比率を24.4%から34%に引き上げます。
図05は全エネルギー消費量における再生可能エネルギー由来の占める割合。一般にエネルギーと言った場合は、電気だけでなく熱利用なども含みますので気をつけて読む必要があります。再生可能エネルギーが29.3%を占めており、さらにその内訳は58.9%がバイオマス由来、36.6%が水力由来とのことです。
図06は図05の再生可能エネルギー分の詳細です。単位はテラWhです。1Wh=3600J
図07は2010年、新規に導入された再生可能エネルギー発電の内訳です。数値にコンマを打っていますが、セミコロンに置き換えていただければ読めると思います。伸びは水力がダントツで、火力がこれに続きます。
図08は水力のうち流れを利用したタイプを紹介しています。これだけ大規模のものは、水量の多いドナウ川あってのお話ですね。
図09はオーストリアの電源構成です。ほとんどが水力を占めていると言いたいのだと思います。が、そういうことであれば高度成長期までは日本も同じようなもので、解釈するとなれば経済規模や産業構造等の要素抜きには語れない部分です。ですので数字の通り読めばいいと思います。
図10、オーストリアの高圧送電網と変電所について書かれた図です。日本人が読むときには、隣国につながっているところに着目すべきです。あとやはりこちらでも系統接続の問題(発電所の発電能力と送電線の容量上限から生じる接続に関する種々の問題)はあるとの答弁をいただきました。
図11は、政府の政策的支援のもとで2012年はどのように新規に再生可能エネルギーが導入されているか表しています。風力が躍進しています。
図12は図11の導入量を受けて、実際に生成されたエネルギー量はどうかについて、構成別に書かれています。
図13は売電価格の推移を表したものです。水力以外のすべての電力源が補助金に依って成り立っています。
図14は、再生可能エネルギー推進によって、各段階でどれだけの雇用が発生しているかを表しています。赤が開発段階、緑が運営段階で生じている雇用をそれぞれ表しています。

資料と説明的にはオーストリア環境省の説明と重複する部分がありましたが、確認もできて大変勉強になりました。

説明が終わりますとみんなでイタリアンレストランに向かうことになりました。途中で雨に降られましたが、これはきっと歓迎の雨・・・

オーストリア視察-その2

さて、本題に入る前にオーストリアの概略について説明します。

人口: 836万人 面積:83,870k㎡ 公用語:ドイツ語
GDP:2,822億ユーロ/年(今のレートで36兆円くらい?)
主要産業:自動車産業および鉄鋼業
森林面積:約4百万ha 森林率:47.2%

人口は大阪府程度、面積は北海道よりやや大きい程度です。かついてはハプスブルク家が統治しており、全盛期には、今のスペインや、イタリア、シチリア、ボヘミア、ハンガリーや東欧までもを領地として支配していました。広いですねえ。GDPは愛知県(2010)とほぼ同程度です。国土は東西に長く、その形状は東向きに進む筋斗雲といえばイメージできるでしょうか?領地のやや北寄りを東から西に縦断するようにドナウ川が流れています。森林面積は北海道の7割です。アルプスが国土の62%を占め、東はなだらかな平野部ですが西に進むほど山が険しくなるといった特徴があります。

ちなみに中西哲県議が詳しい視察記事を公開済みですので、そちらも併せてご覧ください。
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9月15日
関西国際空港を10時過ぎに出発しました。
KLM航空の航空機に搭乗し、約11時間のフライトを経てオランダのアムステルダム空港に到着。正直もうこの時点でヘロヘロ、足はむくんで睡魔に襲われていました。
トランジットのために同空港にて2時間を過ごした後に、さらにKLM航空のオーストリア行きに搭乗。夜の19時過ぎ(現地時間)についに悲願達成、ウィーン空港に無事降り立つことができました。
日本時間でおよそ3時・・・、眠いはずですね。

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856空港にて今回の旅のコーディネーター兼通訳者、エヴァ・ハイブさんと無事に合流すると、一行はジャンボタクシーに搭乗してホテルへ。車窓から見える景色は市街地に近づくに従い目まぐるしく変化します。空港を出て間もない頃は恐ろしくなだらかな起伏をもった大地に牧草(多分)が繁茂するだけだったのに、(新)市街地が近づくにつれどこでも見掛けるようなコンクリート構造物が軒を連ねるようになりました。中心部に近づくと、旧市街ならではのバロック調の過剰装飾が施された中層構造物が文字通り連続して立ち並びます。なぜ彼らは建物間に隙間を作らなかったのだろう・・・寒いからかななどと考えたものです。寒さといえば、オーストリアは北海道と同じくらいの緯度にあって、冬の気温は当然氷点下、夏でも最高26,27度までしかあがりません。したがって旧市街の古めかし建物には必ず暖炉と煙突が備えられているのです。

さて、そうこうしているうちにホテル『Austria Tend Parkhotel Schonbrunn』に到着しました。すぐ向かいには、ハプスブルク王朝の歴代君主が離宮として利用したシェーンブルン宮殿が鎮座しており、ホテルはかつてその迎賓館として利用されていたそうです。ホテルのエントランス横には、エジソンが同宮殿の電気配線工事した時にここに泊まりました的な案内板がありました。

IMG_1709部屋に空きがあるということで宿泊費の変更なくグレードの高い部屋に案内されました。朝食別で一泊105ユーロ程度だったと思います。写真には写っていませんが、左側にはムダに広いバスルームがあります。天井も高い家具も格調高い、きっと光熱費も高い、日本のビジネスホテルとは大違い、こんなんで経営大丈夫なのかなと心配になってしまいました。おおよそ、同じ建物を更新することなく何百年と使っているので、ストックがある分安く提供できるのだろうと勝手に結論。デメリットは当然あって、当時の建築規格内で今日的機材を導入しなければならないわけで、非常階段などは見当たらないしエレベーターも極めて狭く作らなくてはいけないようでした。2,3人で手狭になるエレベーターは問題だと思う(笑)

さて、そのあと近くのご当地居酒屋で晩ご飯を済ませて、現地時間の12時過ぎに就寝しました。起きたのは4時…時差で寝たくても寝られません。

(その3に続く)

前半でこんなに作文を頑張ってしまうと、肝心のところがヘタってしまいそうで心配です。

オーストリア視察-その1

オーストリア視察について順に掲載します。

9月14日

オーストリア視察に出発する日です。目的はCLT (Cross Laminated Timber) と再生可能エネルギーについて見聞を深めることにあります。CLTについては、本県の高知おおとよ製材で生産予定であり、また再生可能エネルギーについては仁井田と宿毛で木質バイオマス発電プラントが稼動予定です。オーストリアは両取組の先進国であることから、ぜひともこれを見てみたいという中西県議の発案から今回の視察が実現しました。

CLTもバイオマス発電も名前は聞いたことがあるけれど…といった人のために簡単に解説をします。

CLTとはクロスラミネイティッドティンバーの略称で一種の集成材・合板です。一般的な集成材は個々の板材を平行に張り合わせて作成しますが、CLTは同様の板材の2層目以降をそれぞれ90度回転させて重ねることによって作成します。ゆえに個々の板材の持つ歪みや強度といった性質がある程度均質化されます(従って、これまで材料にできなかった品質の低い板材も利用可能です)。これは品質が厳しく問われる工業製品にとって非常に重要な性質です。まあ、合板(ベニヤなど)ですでに実現してるじゃないかと言われればそうなんですが。このCLTですが、強度も高く壁材に使うことで中層建築物も作成することが可能です。
(国交省参考リンク)

もう一つの木質バイオマス発電について説明します。これは至ってシンプル。木を燃やして水を加温・加圧し、タービンを回転させることで発電を行います。既存の原子力や火力とやっていることは変わりません。なぜいままで行われていなかったのかというと、既存の発電コストよりも高くつくためです。電力の固定価格買取制度(F.I.T)の導入により、電力会社が20年間、電気を特別に高値で購入することが義務付けられたために経済性が高まりました。古くて新しい木材の利用方法として日本各地で導入が検討されています。

さて、どちらも共通するのは木材を利用するという点です。高知県は84%の森林率ですが、昨今は材価の低迷により林業業界とそれを支える中山間が疲弊の一途を辿っています。ここにCLTや木質バイオマスといった新しい木材の利用方法を提示することができたならば、木材の消費量は増加し価格も上昇、ついては雇用の拡大や中山間の活性化につながることが期待されます。さらには、後に詳しく触れると思いますが域内キャッシュ・フローを増やすことにもつながり、高知県全体の経済の活性化に結びつく可能性があると考えています。

昨年も再生可能エネルギーの調査で訪れたオーストリアではありますが、今回はその発祥地であるギュッシングが訪問でき、CLTの工場も見学できるということで否が応でも期待に胸が高鳴ります。参加メンバーは私のほかに、中西哲県議、梶原大介県議、明神健夫県議、西内健県議の総勢5名です。(その2に続く…)