十月十三日

今日は午前中は五台山くろしおアリーナで開催のスペシャルオリンピックスにプレゼンターとして参加をしました。
スペシャルオリンピックスとは知的発達障害のある人の自立や社会参加を目的として、スポーツプログラムや成果の発表の場として競技会を提供するスポーツ組織のことです。複数形なのはいつでもどこでも活動していることを表しているとのこと。

くろしおアリーナで開催されている競技は水泳です。ディビジョニングと呼ばれる特殊なルールによって、アスリートは性別や競技能力が同程度になるよに組分けをされます。その心は、スペシャルオリンピックスでは他の人に勝つことを目的としておらず、アスリートが自己の最善を尽くすことを目的としているところにあります。今回は水泳競技ですので自己申告タイム毎に組分けが行われその中で速さをきそうわけですが、もし自己記録が申告タイムと比較して25%(だったと思います)を超える誤差を生じた場合は失格となります。

アスリートのみなさんは一様に一生懸命で、結果にかかわらず表彰の段には自分の努力とその成果に対して心から喜んでいるようでした。
その笑顔に私を含むプレゼンター、スタッフのみなさんも包み込まれ同じく笑顔で楽しいひと時を過ごすことができたのではないかと思います。

つぎに高知会館に移動、「安全・安心 住宅リフォーム勉強会」に参加をしました。
高知大学の准教授、原忠さんの講義でしたが時間の都合で途中までしか聞くことができませんでした。
大まかな主旨は、地震の基本的なメカニズムから南海トラフ巨大地震発生時の高知県の被害予測からとりわけ揺れによる被害に着目し、命を守るためにはまず家に潰されないよう住まいの耐震化が不可欠であるとのこと。

南海トラフ巨大地震が発生した場合、東北の海溝型地震ではなく直下型の激しい揺れになる可能性があります。そうなると昭和56年以前の旧建築基準法に則り建築された構造物の多くが倒壊すると予想されます。県でも耐震化を支援する補助金を用意してありますのでご興味のある方は住宅課のページをご参照ください。

昨今の業界事情としては消費税率引き上げを目前に駆け込み需要に沸き立っているそうです。しかし長期的にみると人口減少社会にあって供給超過が続いていますので、新規もそこそこにストックの活用つまりリフォーム需要に活路を見出さなくてはいけません。地震に備えた耐震化は切り口の一つであろうとはおもいますが、中小建築業者はそれだけに依らず、大手ハウスメーカーに対抗できるだけの独自のサービスによって消費者を納得させ満足させることが不可欠でしょう。明朗会計はもちろんのこと3Dプリンターによる可視化、小回りが効くことを活かしたイレギュラーオーダーへの柔軟な対応や入居後の維持管理サービスなど。

次に足を運んだのが古事記勉強会、私の定番になってしまいました。2時間ほど時間を割くことにはなりますが、それを補って有り余るほどの内容です。講師代田健蔵先生の古事記解釈は言霊学によっています。日本語の言葉一つ一つに意味が込められており、その組み合わせによってなる古事記が現代の我々にどのような物語を紡ごうとしているのか興味が尽きません。みなさんもぜひ聞きにいらしゃってください。

次回の古事記勉強会は、11月24日 14時 かるぽーと 9F 会費1000円

オーストリア視察-その6

ついに視察最終日

[9月19日]
6時00分、散歩しましたので写真をご披露。


まず向かったのが前回も訪れた大きな教会。通訳のエヴァさんの話によると、今日のオーストリアでも無宗教の人が増えていて礼拝には行かない人もいるそうです。畏れ敬うことを通して分際を知るわけですから、無宗教とは褒められたことではないですね。
残念ながら教会はまだ開いておりませんでしたので、他の場所を訪ねてみることにしました。しばらく歩くと子どもたちがバスに乗って通学をしているところに出くわします。親が車で送迎というのはあまりなさそうですね。
次に目を引いたのがアーケード街、シャッターで閉めている店舗はありませんでした。通りのデザインが統一されていて良いですね。
その後旧市街の広場に出ます。中央には大きな像が立っていて、すぐそばまでトラムが乗り入れています。トラムの線路は北に延びてドナウ川を越えて北岸に続きます。ふと北岸にいってみようと思い立ちました。橋の上からは雄大なドナウ川の写真を記録。北岸はこれたいったものが、しばらくウロウロすると南岸の旧市街にもどってきました。以上朝の散歩でした。

本日訪問する先は実は昨年もお邪魔したところ。取組の内容が良いので今回はじめての人たちにもぜひ聞いてもらいたいということでメニューにいれました。ホテルからは徒歩5分、ビルの5Fの州立のアッパーオーストリアエネルギー局です。日本風に言えば行政系研究機関といったところでしょうか。応対くださったのはクリスティーヌさん、パワーポイントをつかって説明をしてくれました。

アッパーオーストリア州リンツ市は、人口138万人、面積96キロ平方メートル、主な産業は、工業、サービス業、観光であり、オーストリア輸出総額の25%を占めています。エネルギー局は、州の出資により1991年に設立され、エネルギー効率化と再生可能エネルギー普及促進をその主たる役目としています。顧客は個人、企業、行政と様々です。法規制や政策に関する提案も行います。大きな特徴としてはThe Oekoenergie-Cluster Upper Austria (OEC)と呼ばれる再生可能エネルギーとエネルギー効率化に関する企業群ネットワークを統括しているとのことです。
OECの売上高は22億ドル、雇用は7300人、アッパーオーストリアの輸出シェアの50%を占めています。


(図01)アッパーオーストリアにおける再生可能エネルギーの割合
総エネルギーの34%、熱需要の46%⇒削減された化石燃料輸入額で 10億ユーロ/年分
2030年までに・・・39%の熱需要を削減。電気消費量を0.5%/年の割合で削減、二酸化炭素排出量-65%減
(図02)バイオマス暖房のなぜ?

  • 持続可能かつカーボン・ニュートラルな燃料
  • とりわけビル等の暖房に適している
  • 最新型の暖房システムは低排出ガスで運転が自動化されている
  • エネルギー安全保障を高められる
  • 地域の林業経済を支えられる
  • 森の持続
  • 熱需要を減らす (断熱性向上)
  • 高効率、低排出唯一の設備、発電能力を備えた高効率CHP

→アッパーオーストリアは過去20年間、木質バイオマス暖房分野を開拓し、そして小型システムの分野において世界のリーダーシップをとるようになった
→EUに導入されている木質バイオマスボイラーの25%はアッパーオーストリアの会社によって製造されている

(図03) オーストリアにおけるバイオマス暖房の経済的インパクト
→関連雇用などの経済効果など
(図04) 典型的木質バイオマス暖房設備
→用途によって燃料やボイラーは様々
(図05) バイオマス暖房の導入量(MW)
(図06) 再生可能エネルギーのポテンシャル
→現在値と2030年の目標値
(図07) ニワトリが先か卵が先か論争を克服せよ
→できない理由ばかり挙げるのはやめたいですね
(図08) 図解エネルギー局の仕事 (ムチとニンジンとタンバリン)
→ムチは法規制、ニンジンが補助金、タンバリンが情報や技術
(図09) ムチとニンジンとタンバリンの解説
→この絶妙なバランスが重要だと思う。本県でもこれができれば・・・
(図10) バイオマス暖房に係る主要な政策

(図11) 基準(規制)を通した市場の活性化
→本県のペレット規格等も欧州を参考にすべきだった
(図12) 燃料と設備に係る規制を通じた市場の活性化
→図11の補足
(図13) 意識とスキルを高める
→最終消費者向けのアプローチも忘れていない
(図14) 研究と開発プログラム
→たぶん後述のOECクラスターが対象なのだろう
(図15) ビジネスモデル:バイオマスによる地域暖房
→本県でも検討に耐えるモデル
(図16) ビジネスモデル:バイオマス熱供給のリース契約
→普及のためには検討すべきモデル
(図17) バイオマス熱供給のリース契約

(図18) OECクラスター組織図
→エネルギー産業のクラスター
(図19) OECクラスターの効果

(図20) OECクラスターの構成

資料はすべて2012年訪問時のもの。説明は去年のほうが充実してたかなぁ。
当エネルギー局で特に参考になる部分は、ムチとニンジンとタンバリンのバランスの良い使い方。そしてOECのエネルギー産業クラスター。

本県でもメガソーラーや木質バイオマスなどの再生可能エネルギーを推進している。その施策の中身は、立候補した事業体に補助金を入れて支援するといったものである。しかしこれではどうしても受け身であり場当たり的な感が拭えない。私は本件については行政が主体的責任を負うようなリスクをとっても良いのではないか、いやそうでなければ形にならないのではないかと思う。詳細は(たぶん)その7に譲りたい。

IMG_1844最後の視察を終えた一行は、ホテルに戻ると荷物を持ってタクシーに。リンツ駅からウィーンを目指します。電車はやっぱりQBB。たしか私鉄も相互乗り入れをしていて、そちらは少し安く乗れたように記憶しています。駅で昼ごはんのマクドナルドハンバーガーを買いました。日本のものより大きいですね、写真を撮っておけばよかった・・・このあと約2時間かけてウィーンへ

ウィーンについた一行は地下鉄でホテルへ。ホテルは初日~2日目と宿泊したホテル『Austria Tend Parkhotel Schonbrunn』です。初日のように広い部屋というわけにはいきませんでしたが、それでも十分なスペースがありました。残された時間は市内をみんなで散策、夜は食後にシェーンブルン宮殿のクラッシックコンサートを少々かじって視察最終日を締めくくるのでした。

オーストリア視察-その5

視察も峠を越えてその5まで到着することができました。もっとシンプルにすれば楽だったのでしょうがこれも性分ですね。

[9月18日]
さて、相変わらず時差ボケで朝は早いです。夜明け前には起きだしてゴソゴソはじめます。ひと通りニュースなどをネットで確認すると寝たり起きたりを繰り返して朝食へ。どこへいっても代わり映えしないビュッフェスタイル。日本の田舎の民宿との違いについて考えてみると、wifi環境があることとクレジットカードが使えること、この2つの差は大きいように思えます。まあ田舎来てまでネットしなさんなと言う考え方もあるかもしれませんね。

さて、時間になりましたので昨日と同じ運転手さんのジャンボハイヤーにお世話になります。一行は2時間半ほどかけてウィーンの真西、ニーダーエスターライヒ州メルク郡イップス・アン・デア・ドナウにあるStora Enso株式会社を訪問しました。同社は世界23カ国に展開し、CLT以外にも製紙やペレットなど様々な事業を手がけているそうでうs.
同社は基本撮影禁止ということで、残念ながらレクの時の写真しかありません。
IMG_1799さて、このたびStora Ensoを代表して対応くださったのはヨハネス・ウィッペル氏とのユーゲン・バウアー氏。ヴィッペル氏は国際取引が担当で日本にも何度か足を運んでいるとのことでした。

テーマがCLTだけあって、みなさんこれでもかと言わんばかりに質問攻めです。同社の製材部門の売上は1億500万ユーロ、関連社員は3,000名とのことでした。東京にも事務所を構え、CLTについては本年度中に日本農林規格(Japanese Agricultural Standard)を取得する予定。うー、大豊製材もうかうかしてられませんね。彼らも虎視眈々と日本市場を狙っています。カタログみればスペックについて説明があるわけですが、彼らの言葉でCLTの魅力について語っていただきました。

  • 工期が短い(2F建ての家だと4人で2日)
  • コンクリート構造物より軽い
  • 耐震性・防火性が高い
  • 健康や快適性
  • サステイナビリティ

パネルを組み合わせるだけなので工期が短い、したがってCLTのやや高めの材料コストも吸収されて十分競争できるとの言い分でした。耐震性も十分兼ね備えているし、彼らのいうところの防火性も90-120分経過しないと構造耐久力上支障が生じないとのこと。また医学的に健康に良い影響を与えることが分かってる的なことと、木材だから持続可能性に配慮されていると言っておりました。ついでに日本にはどのような形で進出するのか?工場なども日本国内に用意するのかと尋ねたところ、あくまで製品輸出とのこと。中層建築物をターゲットにパターンオーダーで販売するそうです。部品の種類をしぼることで製造コストを下げて輸送コスト追加分を吸収するとういことですね。

さて本当にバラ色かね?そのような疑問をぬぐいきれなかった私は、帰国後日本木造住宅産業協会の某氏や大豊CLTの技術関係でお手伝いされている日本なんとか株式会社の方に根掘り葉掘り聞いてみた。まず工期で多少コストが圧縮されようとも、高い材料代は簡単に吸収されない可能性があるとのこと、そもそもパネル工法はCLTの専売特許というわけでもない。そしてJASを獲得したとしても、その他にクリアすべき法律の壁があるということ。日本では防火性とは別に準耐火性つまり準耐火建築物として満たすべき要件がある-(壁、床、軒裏で延焼の恐れのある部分は、火災に犯されても45分間は、屋内に面する温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない性能に適合すること。(延焼の恐れのある部分以外は30分間))。燃えちゃダメなんて日本恐るべし。そんなこんなで他の建築資材と同条件で利用できるようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。それから国内輸送コストが馬鹿にならないということ、これには大豊もこたえますね。驚いたことには、アメリカやEUからの搬送コストが東京都心から50kmと同等だそうです。

そしてバウアー氏は、EU圏でCLTが受け入れら易い理由として、人体への影響やサステイナビリティをあげていた。EUでは木造家屋が人体、とくに健康や精神与える影響についての研究が比較的に盛んに行われており、CLTの持つ付加価値として認知されているそうだ。しかし、この分野は日本では梼原町などで研究がはじまったばかりであるし、良い結果が出たとしてもコンセンサスの形成にはまだ乗り越えなければならない障壁が多い。そしてサステイナビリティについても、日本では価格訴求力に全面降伏を強いられそうな気がする。となるとオーソドックスに地産地消路線なのだろうけれど、県内に中層構造物の民需を期待するのはなかなか厳しいものを感じます。そうなるとまずは公共建築物での率先利用でしょうか。

さて、質疑を終えた一行は工場見学を行いました。写真がないのが残念です。ほとんどの作業がオートメーション化されていて見る者を圧倒しますね。データの指示に従って、機械がカスタム加工もあっという間に仕上げてしまいます。

これでもCLT
これでもCLT

さて、一行は工場を出ると実際のCLTを用いた建築物を見学しました。外壁は断熱材や外装に覆われていて直接拝むことはできません。木材部分を露出させるさせないも自由に判断いただけるし、すでに紫外線処理をしてあるので露出させたとしても変色の心配はないと言っていました。中に入るときちんと木目が確認できます。木の空間は心が落ち着く上に温みがありますね。

ひと通り見学を済ませると、ドナウ川沿いのレストランにて昼食を済ませました。

食事後はイップスの外れの小水力発電所を見学に。国境付近から1時間半もかけて説明に駆けつけてくださったのは、HYDROENERGYのピーター・フランカーさん。すぐにでもご挨拶をすませて本題に入りたいところですがそこで私達を襲ったのは生理現象。本人を目前に控えて、トイレを探して街を徘徊することになります。

間一髪危機を脱した一行は、ピーターさんのもとへ向かいます。そして彼の説明がはじまりました。HYDROENERGYでは、主に15kW-15MWの水力発電設備を生産・販売・施工しています。昔はもっと小型の発電設備も取り扱っていたけれど現在は切り上げたとのことでした。本施設には1MWのカプラタービンと呼ばれるものが設置されており、水車のほかにトランスミッション、ジェネレーターで構成されています。発電機の高さは3.90m、流量は30.0㎥/sec、回転速度は107rpm、水車の直径は2740mm。完全自動化がなされており、普段の管理は会社からリモートで行われます。変わった工夫が凝らしてあって、発電時に発生する熱を回収して隣接するアパートの温水や暖房に供しているとのこと。導入費用は70万ユーロ、売電価格は5-7セント/kW、年間に4-7日メンテで停止。同発電所は管理こそHYDROENERGYですが、所有はワイトホーフェン市に帰属します。国から20年間の河川の利用権を得て設置したそうですが、一般に河川利用は申請から5-10年たたないと許可が下りないそうです。

小水力発電の視察を終えると、リンツ目指して移動をします。一行が車を降りたのはアムシュテッテン駅。そこからQBBなる国鉄の快速電車に乗ってリンツ駅を目指します。団体割引乗車券を購入すると1枚のチケットが渡されました。オーストリアでは1枚のチケットが5人の乗車許可証となるようです、席離れて座れませんね。30-40分も揺られると視察最後の訪問地、リンツに到着しました。私はここの街並みが好きなので、翌朝にでも市内観光を兼ねて散歩をしようと思ったのでした。

今日もくたくたです。余談になりますがオーストリアはじめEU圏のお店は、一部の飲食店等を除き19時には閉店するようです。法律なんかもあるのかな、すくなくとも某宗教絡みです。どのお店もショーウインドウはライトアップが原則ですが、その心は治安?それとも景観?いずれにせよ環境に重きを置いている国々らしからぬお話ですね。