燃料電池の時代

昨今紙面を賑わしている燃料電池について記事を書こうと思う。

いまから10年以上も前のこと、大学の学部3年制のころになる。
私が学んだEnvironment & Energy コースでは、再生可能エネルギーをはじめとして核融合、核分裂といったニュークリアエネルギー、メタンハイドレート、(なぜか)船舶のこと、かろうじて環境に関係しているかもしれないリモートセンシング技術等をはじめとして、燃料電池についても学ぶ機会を得た。当時は本当に研究途上といった印象で、燃料電池の試験車両の開発コストが1億円とかそのような段階だったと記憶している。

あれから時が経つのは早いもので、10年もすぎれば技術も進歩する。いまでは700万円程度で市販車が手に入るようになった。といっても燃料ステーションが全国に40箇所足らずということでまだまだ普及には時間がかかりそうだ。

しかし、この燃料電池は必ず普及すると予測している。ぜひ知っておいてもらいたいと考えて、高知県議会自民会派のみなさんを連れて昨年にはNEDOを訪問したが、そのときの記事があるので原理等について詳しく知りたい方はそちらを参照いただきたい。記事:NEDOの燃料電池

なぜ燃料電池なのかと言えば、簡単に言えばガソリンが将来にわたって高騰を続けるからだ。そしてもうひとつは二酸化炭素による地球温暖化の問題がある。

ここでもう一つの疑問が頭をもたげる。次世代自動車といえば、燃料電池以外にも電気自動車があるではないかという問いだ。これに対する答えは棲み分けがなされる、とするのが適当かもしれない。電気自動車はその名の通り、バッテリーを搭載してそこから供給される電気でもってモーターを回転させ推進力を得る。しかしこのバッテリーの容量が枷であり、容量を増やせば重量も増えるので走行距離が必ずしも順調に伸びるわけではない。一方燃料電池は水素を700気圧に圧縮して搭載をしており、1充填当たり760kmの連続走行が可能と言われている。ということであれば、都市の通勤などでは電気自動車、長距離移動の際や大型バスなどは燃料電池車を採用するということになるのではないだろうか。

さて、燃料電池押しな理由はもうひとつある。これからガソリンにかわって、水素やメタン(CH4)、エタノール(C2H5OH)が活用されるようになるからだ。エネルギーの貯蓄は従来からの大きな問題であったが、水素という形態で保存することも視野に入ってくる。さらに製品の製造過程において副次的に発生する水素ガスは、現状未利用のまま廃棄されているが、その有効利用にも道がひらけるというものだ。都市ガスのパイプラインを使えば、端末に燃料改質装置を据えるだけで比較的容易に水素を供給できるようになる。そのほかには充填時間も電気自動車に比べて格段に短いといったメリットがある。

ちなみに純粋水素以外にも、水素に窒素を加えた水加ヒドラジンや水素化カルシウムなどの液体・固体と様々あたらしい水素系燃料が開発されている。各々課題があって、まだまだ主役を張れるような段階ではないが、注目度が上がればあがるほど研究開発も進むというもの。我々の社会生活に欠かせない燃料として君臨する日もそう遠くはないはず。