連番を振ってしまったからには書かないわけにはいかない!?
9月16日
ついに視察初日に辿り着きました。感慨深いものがあります。
ホテルの朝食はビュッフェ形式、ホテルはどこものこの形式ですね。6時半からパパッと仕上げるとお隣のシェーンブルン宮殿に散歩に向かいます。実はこの時、となりにあるのは只のだだっ広い公園だと思っていました。
公園に足を進めたは良いものの向かいの道に終わりが見えません。また植林の枝葉を使った幾何学的な意匠に圧倒させられていたところに飛び込んできたのがシェーンブルン宮殿でした。
幾何学的な壁
幾何学的な何か
シェーンブルン宮殿アップ
シェーンブルン宮殿庭
シェーンブルン宮殿をグロリエッテより望む
向かいの丘のグロリエッテ
あっと言う間に出発の時間、一時間は歩いたかな?部屋をまとめてホテルのロビーに向かいます。
通訳のエヴァさんがすでにスタンバイしており、全員が揃うとすぐそばの地下鉄の駅に向かうのでした。
ホテル最寄りの駅がHietzing、緑のU4の西端から5駅目です。一行はLandstraβe駅のU3線乗り換えで東端のSimmeringを目指します。市内の主要な公共交通は公営であることから、バス、トラム(路面電車)、地下鉄を問わず同じ切符で相互乗り入れが可能です。切符は乗車可能時間や距離によって様々な種類がありますが、現地の方は年間定期(350ユーロくらい?)を所持するのが一般的とのことでした。私達は24時間使える切符を買いました。改札にはスタンプマシンが2個設置されているだけで出入りは自由自在。無賃乗車対策は抜き打ちのチェックによって行っているそうです。違反時のペナルティが厳しいらしい。
Simmeringの駅に到着すると路線バスに搭乗、もちろん切符は一日同じものを使います。5分も揺られると目的地と思しき大きなプラントと2本の煙突が見えてきました。敷地入口が見つからず20分ほど彷徨ってしまいました。
[Vienna-Simmering Biomass Power Plant]
インストラクターはボランティアのハッカー氏。懇切丁寧にお話をしてくださいますが、どちらかと言うとプラントの技術面にウェイトが寄っていましたが、一行の興味は残念ながら金銭はじめ運営面にあるのでした。いろいろと申し訳ありませんでした。
さて、このプラントはもともと他の用途に利用されていたものを改築して現在に至っているようです。敷地内にはガスコンバインドサイクルの発電機が3基と、バイオマス発電機が1基設置されています。
プラント遠景
プラント
プラントコンセプト図
木質チップ
フライアッシュ
燃料供給口
サイズ超過材および金属除去装置
燃焼ボイラー周辺
発電機
<概要>
2001年計画、2006年運転
プラントの構成: 燃料置場、サイズ超過の材や金属の除去装置、燃料サイロ、CFBボイラー、窒素収集触媒、復水タービン、ガス浄化装置
プラント出力: 66Mw
うち 発電: max 24.5MW 熱供給: max 37.0 MW
熱利用効率: 平均50% (夏37%、冬80%)
燃料: 含水率42% 木質チップ(ブナ7割、トウヒ3割)、供給圏半径50-80km(国内(7割)および国外(3割)チェコ、スロバキア、ハンガリー含む)
稼働時間: 年8000時間
燃料消費量: 75㎥/h消費(24トン相当) つまり600,000㎥/年
補助金: 施設にEUおよびオーストリア政府
売電価格: 市場価格の3倍、約10.5セント/kw 円換算で約13円/kWh、但し13年間の2019年まで
年間熱供給総量: 平均167GWh
燃料保管用サイロサイズ: 7,500㎥ チップの保管期限が4日 24hrs/day × 4 days × 75㎥/hrs
ウィーン市内(人口171.3万人)の電力需要量に対する当バイオマスプラントの寄与率は2%弱、ガスコンバインドサイクルの合計発電容量が1100MWであることを併せて考えると都市部のミドル電源にすらなりえないなぁというのが正直な感想。燃料となるチップ材供給の物理的限界を考えると、木質バイオマス発電はもう少し小規模な地域への熱電併給のために利用するほうがベターだろう。ちなみに発電出力24.5MWというのは、高知県で建設予定のものの約4倍に相当する。燃料チップは、発電所から5kmほど離れたドナウ川の河川敷周辺に集められた丸太からチッパー(350㎥/h)で作成。そこから一日あたり30台のトラック(95㎥)で搬送しているとのこと。国内供給の7割は、プラント運営会社の共同出資者でもあるオーストリア森林管理局株式会社(国有林を管理)から調達。フライアッシュ(燃焼灰)は粒度により用途が分かれているようで、一番粗い物は舗装材などに混ぜて、細かいものは自然に返して(埋めて)いるそうです。
しかし日本の半分程度の売電価格とは恐れ入りました。固定価格買取制度の継続年限終了後、2019年以降のプラント運営が問題になるとのお話でしたがさもありなん。しかし、夏と冬の熱利用効率に加えて、夏の発電量が24MW対して冬が14MW(わざと絞ってる)であることを考慮すると、Simmeringの条件下ではさっさと発電やめて熱供給だけに絞ったほうが良いなぁと運営は考えているようです。
Simmeringの視察を終えて一行はオーストリアの環境省に向かいます。30分ほど時間があったので昼食をと、環境省前の城壁?という名前の食事処に寄りました。日替わり定食を頼むとカツレツが出てきました。店の名前が旧市街を取り囲んでいた城壁に由来するものだそうです。
環境省ではお二人の方から挨拶と説明をいただきました。話の内容はオーストリアのエネルギー政策の現況とこれから、考え方についてです。(この部分については資料が届き次第追記します。たしか投資効果なども定量的評価を行っていたと思います。)
環境省を出た後は再度地下鉄を利用してホテルへ。
ホテルではAUSTRIAN ENERGY AGENCYのガーター・パウリッシュ氏を迎えて三度エネルギー政策についての勉強です。会場にはホテルの喫茶店を利用しました。
AUSTRIAN ENERGY AGENCYは日本風に言えばエネルギー協議会のようなもので、構成メンバーは政府系組織・自治体・公営企業・民間企業と多岐に及びます。
図01
図02
図03
図04
図05
図06
図07
図08
図09
図10
図11
図12
図13
図14
レクチャーの内容については上のギャラリーに基づいてお話します。(図01) オーストリアと日本の比較からはじまりますが、太字の部分が彼が強調したいところ。まず原子力発電はありません、森林率は日本よりも低いですが、ヨーロッパで最も高い47.2%を誇っている。バイオマスからエネルギーを213.1ペタジュール得ていることがわかります。読む側としては、オーストリアはバイオマスエネルギーに力入れてがんばってますねと受け取ればいいと思います。
図02は、EU27ヶ国の目標に関するお話です。RES (=Renewable Energy System) は再生可能エネルギー(1人あたりGDPによる補正有)と読み替えていただいて、その2005年時点のシェアを2020年には図のようにするというお約束をしたという話です。ATがAustriaで、23.3%を40%に引き上げると書いてあります。
図03はオーストリアエネルギー政策の3つの柱について書かれています。
再生可能エネルギー
エネルギー効率
エネルギーの安定供給(安全保障)
図04はエネルギー需要の将来予測。単位はペタジュール。オーストリア政府は、2020年までエネルギー消費量を増やさないと言っています。経済活動の拡大によって純増すべき部分はエネルギー効率を上げることによって圧縮し、さらには再生可能エネルギーの比率を24.4%から34%に引き上げます。
図05は全エネルギー消費量における再生可能エネルギー由来の占める割合。一般にエネルギーと言った場合は、電気だけでなく熱利用なども含みますので気をつけて読む必要があります。再生可能エネルギーが29.3%を占めており、さらにその内訳は58.9%がバイオマス由来、36.6%が水力由来とのことです。
図06は図05の再生可能エネルギー分の詳細です。単位はテラWhです。1Wh=3600J
図07は2010年、新規に導入された再生可能エネルギー発電の内訳です。数値にコンマを打っていますが、セミコロンに置き換えていただければ読めると思います。伸びは水力がダントツで、火力がこれに続きます。
図08は水力のうち流れを利用したタイプを紹介しています。これだけ大規模のものは、水量の多いドナウ川あってのお話ですね。
図09はオーストリアの電源構成です。ほとんどが水力を占めていると言いたいのだと思います。が、そういうことであれば高度成長期までは日本も同じようなもので、解釈するとなれば経済規模や産業構造等の要素抜きには語れない部分です。ですので数字の通り読めばいいと思います。
図10、オーストリアの高圧送電網と変電所について書かれた図です。日本人が読むときには、隣国につながっているところに着目すべきです。あとやはりこちらでも系統接続の問題(発電所の発電能力と送電線の容量上限から生じる接続に関する種々の問題)はあるとの答弁をいただきました。
図11は、政府の政策的支援のもとで2012年はどのように新規に再生可能エネルギーが導入されているか表しています。風力が躍進しています。
図12は図11の導入量を受けて、実際に生成されたエネルギー量はどうかについて、構成別に書かれています。
図13は売電価格の推移を表したものです。水力以外のすべての電力源が補助金に依って成り立っています。
図14は、再生可能エネルギー推進によって、各段階でどれだけの雇用が発生しているかを表しています。赤が開発段階、緑が運営段階で生じている雇用をそれぞれ表しています。
資料と説明的にはオーストリア環境省の説明と重複する部分がありましたが、確認もできて大変勉強になりました。
説明が終わりますとみんなでイタリアンレストランに向かうことになりました。途中で雨に降られましたが、これはきっと歓迎の雨・・・